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For Tracy Hydeについて

高校生の時から大好きなバンドであるFor Tracy Hydeが『Film Bleu』というアルバムを出した。BoyishやUkiyo Girlというバンドと共に僕の所謂青春と呼ばれる時期に寄り添ってくれていたバンドだ。

 

Film Bleu

Film Bleu

 

 

はじめて聴いたのは高校2年の春とかだった気がする。そのときはまだ夏botさんがボーカルでCanata Recordsから無料でダウンロードできる『Satellite Lovers』というアルバムが大好きだった。当時はインディーのバンドをあまり聴いていなかった、知らなかったこともあってもう単純に「こんなめっちゃ渋谷系の曲作る人がいるのかーめちゃめちゃ最高だなー」くらいに思っていた。

僕が高校3年生になってすぐくらいにラブリーサマーちゃんがボーカルとして加入した。もちろんラブリーサマーちゃんの曲は好きだったし声とかめちゃめちゃ良いしズルいわーとか思っていたのだけれど、For Tracy Hydeに加入するというのはどうなんだろうと正直思っていた。僕は夏botさんの歌声がとても好きだったし、それが聴けなくなるのはどこか寂しかった。でも、ラブリーサマーちゃんが加入してから出した最初のEPで衝撃を受けた。めちゃめちゃ最高だった。当時自分はバンドをしていなかったし曲を作ってもいなかったのだけれど、勝てないと思った。それくらい女性ボーカルがハマっていて、それでとても綺麗な言葉で綴られた歌詞を歌われたら圧倒されるしかなかった。そのあとライブ会場で次のEPである『Born To Be Breathtaken』を購入したが、これもまた凄まじく良かった。僕はもうFor Tracy Hydeの大ファンなのだ。

ボーカルがeurekaさんに変わってからは、さらにバンドとしてガッチリハマった感じがして最高だ。辻くんもよく言うのだが歌詞がすごく明瞭になった感があってとても良い。

その歌詞についても触れたい。

botさんの歌詞はとても綺麗で美しい。最近何度も言っていることなのだけど僕は現実とコミットした歌詞が好きだ。基本的に僕は歌詞で救われたいと思っているのだけれど、今まで救われてきた歌詞はほとんどが、現実を肯定し人間の機微と人間だけではないこの世のすべての混然とした美しさを表現しているものだ。(小沢健二はまさにそうで、何回救われたかわからない)なので現実ではない虚構の世界をどれほど美しく描かれても、そこに入り込めないし救われない。これは感性の違いがあるってだけの話だからどちらが良い悪いではないし間違っても批判と捉えないでいただきたい。僕はFor Tracy Hydeの歌詞世界は虚構の世界だと感じる。本当に綺麗で美しい虚構世界だ。ただ今まで聴いてきたそのようなバンドとは何が違うかというと、この『Film Bleu』というアルバムはいとも簡単にその世界に入り込めてしまう、というところだ。そしてそれがとても心地良い。入り込みすぎて、これが現実なのではないかと思わせる。僕にとっては今までこのようなアルバムはなかったと思う。さらに言うと、フレーズだけを引っ張ってくるなら本当に切ない人間の心の機微を描いていて、ものすごく現実とコミットしてるように思わせる。というより、本当はすべてそうなのではないかと思ってしまう。

これは僕がこう感じた、こう思ったというだけなのでもっと様々な捉え方があると思うし、どう捉えるかはリスナーの自由だと思う。とにかく自分にとってとても刺激を受けることになったアルバムだ。まだ未聴の方はぜひ聴いていただきたい。(たぶんおぼえていらっしゃらないと思うのだけど、ぼく一回だけお茶したことがある、これ自慢)

最後に僕がいちばん好きな歌詞を載せておきます。僕はFor Tracy Hydeが大好きだ。

 

「After」

どうして雨は止んでしまうのかなって、君との雨宿りのたびに考えてた。

通り過ぎたスコール、微熱を奪うことなくーー

そんな日々も今は昔?

 

どうしてもかすらない視線の先で、君は違う誰かを想い描いているの?

飲み干したスコール、べたつく甘さと温度。

私の白昼夢はまだ覚めちゃいないのに。

 

揃いのミサンガは私の願いを叶えずすり切れて、空転する時間を静かに物語ってる

いまだって手をのばすのに、君が君じゃない錯覚がなに食わぬふりをさせるの。

 

教室に忘れた詩編にも似た手紙の、フレーズがほつれて注ぐような、

追憶のスコール、ひとりきり思い出すーー

そんな君じゃないとわかってる。

 

はじめて交わした言葉をいつしか忘れていたように、長くて緩やかな終わりが続いていたのかな。

感傷と上手く折り合えずにいるのはわたしの方なのに、すっと笑ってみせるから、もどかしいな……。

 

ねえ?

 

許したふりがたやすいのは、茜射す光の角度が強がりも悲哀も絵に変えてしまうから。

許せないままでいるのはさ、きっと君のことだけじゃない。湿った歩道の風に吹かれて、想うの。